design2025年3月15日

プロダクト開発における「UIUX」とは:常識への叛逆

平原

CEO

〜UI/UXは存在しない:存在するのは「人間と製品の関係性」だけだ〜

多くの企業が「UIUXデザイナー募集」と求人を出し、製品開発の現場では「UIUXを改善しよう」という言葉が飛び交います。しかし、このコラムではあえて挑発的な視点を提示します:UI/UXという概念は、本来の目的を見失わせる有害な幻想かもしれない

UIとUXを分けること自体が時代遅れの概念

UIとUXを分けて考えることは、デジタル製品が登場した初期には理解しやすい区分けでした。しかし現代のプロダクト開発において、この二分法は実態にそぐわない古い思考モデルです。

ユーザーはインターフェースだけを体験することはありません。同様に、体験だけを切り離して設計することもできません。存在するのは「人間とプロダクトの関係性」という一つの連続体のみです。

この関係性という視点から見ると、UIとUXを分けることは、「森」と「木」を別の専門家に任せるようなものです。全体を見失い、最適化の名の下に部分最適のみを追求する罠にはまりがちです。

「使いやすさ」の追求は革新の敵となる

プロダクト開発の現場では「使いやすさ」や「直感的な操作性」が金科玉条のように扱われています。しかし歴史を振り返ると、真に革新的なプロダクトは登場時に必ずしも「使いやすい」とは評価されませんでした。

初期のiPhoneはボタンがなく使いにくいと批判され、Twitterの140文字制限は不便だと揶揄されました。しかし結果的に、これらの「使いにくさ」が新しい可能性を切り開き、ユーザー行動に変革をもたらしました。

過度に「使いやすさ」を追求することで、ユーザーの可能性を矮小化していないでしょうか?真に革新的なプロダクトは、初めは「違和感」や「学習コスト」を伴うものです。それを恐れずに、あえて新しい行動様式を提案する勇気が、差別化の鍵となります。

デザイナーという職種は消滅する

AIの台頭により、従来のUIUXデザイナーの役割は急速に変わりつつあります。テンプレート化できるデザイン業務はAIに置き換わり、「デザイナー」という職種は今後5年で劇的に変容するでしょう。

ではプロダクト開発においてデザイン思考は不要になるのでしょうか?答えはNoです。むしろ逆に、デザイン思考はあらゆる職種に浸透し、専門職ではなく「全員の仕事」になっていきます。

これからのプロダクト開発では、特定の「UIUXデザイナー」が存在するのではなく、エンジニア、マーケター、営業、経営者の全員がユーザー体験に責任を持つ時代になります。重要なのは肩書きではなく、「ユーザーの立場で考える力」と「仮説を素早く検証する習慣」です。

ユーザーの声を聴くことの危険性

「ユーザーの声を聴け」はプロダクト開発の鉄則のように語られています。しかし歴史上の革新的プロダクトの多くは、ユーザーが「欲しい」と言ったものではなく、ユーザーが「欲しいと気づいていなかったもの」でした。

ヘンリー・フォードの「もし顧客に何が欲しいか聞いていたら、彼らは『もっと速い馬』と答えただろう」という言葉は示唆に富んでいます。

もちろんユーザーの声を無視せよと言っているわけではありません。しかし、表面的な要望に囚われず、その背後にある本質的なニーズを掘り下げる洞察力が重要です。時には「顧客の声に逆らう勇気」も必要になるでしょう。

「一貫性」よりも「適応性」を優先せよ

デザインシステムやガイドラインの構築は、現代のプロダクト開発では標準的な取り組みになっています。一貫性のあるUIは学習コストを下げ、ブランド認知を高める効果があります。

しかし急速に変化する環境下では、「一貫性」が「硬直性」に転じるリスクがあります。ユーザーの期待やテクノロジーの進化に合わせて、適切なタイミングで「非連続的な変化」を取り入れる勇気が必要です。

優れたプロダクトは「一貫性」と「変革」のバランスを巧みに取り、ユーザーが気づかないうちに進化しています。

結論:UIUXはゴールではなく、手段にすぎない

プロダクト開発におけるUIUXの本質は、見た目の美しさでも操作性の良さでもありません。それはユーザーの人生や仕事に価値をもたらし、行動変容を促すことにあります。

「使いやすい」製品ではなく、「なくてはならない」製品を作ること。そのためには時に常識を疑い、短期的な不便さを受け入れ、長期的な価値に賭ける勇気が必要です。

UIUXという言葉に固執せず、本質的な「人間とプロダクトの関係性」を探求すること。それが次世代のプロダクト開発者に求められる思考なのです。

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